カルチャー
コーディネートが美術館に入るとき
V&Aはロリータ・ファッションを驚くほど精密に保存している。一方、コミュニティのアーカイブには、収蔵記録に収まりきらない動きや変化、人との関わりが残されている。
ロリータ(Lolita)のコーディネートは、関係から生まれる。ドレスとパニエ、ヘッドドレスと髪、靴と姿勢、着る人とその日の場面。美術館に収蔵されると、そうした関係にはラベルと収蔵番号が付き、ポーズも固定される。そこにあるのは、精密で美しく、けれどすべてではない姿だ。
Victoria and Albert Museumが撮影したInnocent Worldのドレスは、全身の装いとして見せられている。マネキンの背後で開いた日傘は、淡い光輪のようだ。籐のバスケット、手袋、ヘアバンド、靴にも、赤とクリーム色、黒の配色が続く。それでも美術館のキャプションに記されているのは、ドレスと2本のサッシュだけ。同じデジタル・スライドショーの別の箇所では、ヘアバンドに独立した記録と番号が与えられている。
こうして一つのコーディネートが、収蔵品の集まりになる。写真は全体としての印象を取り戻し、カタログはその全体を、保管し、探し出し、調べることのできる個々の物へと分ける。どちらの見方も役に立つ。けれど、どちらも実際に服を着ることとは同じではない。
美術館には区切りが必要
収蔵番号は、物に持続的な区切りを与える。一着のドレスを別のドレスと区別し、作り手と制作年を結び付け、展示が終わった後も画像を検索できるようにする。商品名やワードローブの写真、個人の記憶を通して広まることの多いファッションにとって、こうした記録は珍しいほど安定している。
同時にそれは、着る人が何度でも問い直す「何を組み合わせるか」という問いへの、一つの答えを固定する。美術館のマネキンは完成したコーディネートを示しているように見える。だが、サッシュは別の結び方ができるし、ブラウスは替えられる。パニエのボリュームを増やすことも、同じドレスを改まったお茶会からいつもの街へ連れ出すこともできる。カタログが守るのは服という物。コーディネートは、着ることで生き続ける。
Lo Libraryにある中国語のコミュニティ・アーカイブは、それとは反対の性質を持つ記録を残している。初期のロリータ愛好者を扱うページには、圧縮された鏡越しの写真、コラージュ、顔を隠した画像、コートやバッグ、髪型を変えた数々の試みが並ぶ。美術館のように光は管理されておらず、物ごとの詳細なデータもない。その代わり、変わり続ける部分が残っている。寝室や遊園地、日常の室内で、人が組み合わせを試している姿だ。このアーカイブを検証済みの年表として扱うことはできない。それでも、服がただ展示されるのではなく、その着方が探られ、調整されていく過程を伝える貴重な資料である。
最初の部屋は一つではない
専門機関が描く歴史でさえ、出発点は一致しない。V&Aはロリータを、1990年代の日本で生まれたストリートスタイルと説明する。一方、Mariko Yahataのルーツ研究は1980年代のロマンティック・ファッションまでさかのぼり、1990年代を第2の隆盛期、2000年代を多様化の時期と捉えている。この違いには学ぶところがある。サブカルチャーは、たった一つの発売日から始まるものではない。服、音楽、店、雑誌、習慣が集まり、やがてそれと分かる言語が形を取る。
V&Aが2011年に収蔵した服は、その言語の起源ではなく、成熟した一時期を記録している。コレクションにはSweet、Classic、Gothic、Punk、そして和の要素を取り入れた装いがある。こうした呼び名は、来館者にワードローブへの入り口を示す。だが、実物はいつも、割り当てられた分類の収まりのよさを問いかけてくる。
分類が描くのは境界線ではなく地図
Moi-meme-Moitieの装いは、ひと目でゴシック・ロリータだと分かる。黒を基調に、ウルトラマリンの十字架が身頃と裾にアクセントを付け、日傘がシルエットを広げる。けれど、スクエアネック、ギャザーを寄せた袖、丁寧に繰り返される縁飾りは、より甘いコーディネートとも共通する形の文法に属している。暗さが変えるのは感情の調子であって、構造そのものを捨てるわけではない。
Alice and the Piratesの装いを見ると、その重なりはさらによく分かる。V&Aによれば、このブランドはGothicやPunkの影響への関心の高まりを受け、Baby, the Stars Shine Brightの別ラインとして生まれた。名前には、Lewis Carrollのアリスと、Vivienne Westwoodに結び付く海賊のイメージが重ねられている。マネキンの淡い青と白は甘さを感じさせるが、黒いパイピング、縞のタイツ、黒いぬいぐるみの相棒が、全体に鋭さを添える。
分類があると、遠くから眺める人も、装い同士の似たところに気付ける。それが窮屈になるのは、着る人が全員従うべき規則だと取り違えられたときだけだ。美術館の写真は、決定版の制服ではなく、選択の具体例として読むとき、最もよく語りかけてくる。
美術館の入り口に身体が戻る
2012年5月、V&AでKitty and the Bulldogが展示されていた時期に、英国のTea Party Clubから100人を超えるメンバーがロリータ・ファッションで美術館を訪れた。美術館の若者グループによるレポートには、多様な職業、スタイルに出会った経緯、そして慣習を自分なりに調整する様子が記録されている。参加者は繰り返し素材の質を重視すると話し、自分の好みに合わせてファッションを取り入れるという声もあった。
その集まりは、マネキンでは示せないものを見せる。人が集まったときのスケールだ。美術館の入り口に並ぶ100通りのコーディネートは、少数の分類にきれいに分けられはしない。生地は雨に反応し、靴はグループの歩く速さを変える。友人は、カタログが省いた細部に気付く。ドレスは正面から撮られた一枚の画像ではなく、誰かと出会う場面の一部になる。
アーカイブは二つあるほうがいい
美術館の記録は、物をはっきり見せてくれる。街の写真にある視覚的な雑音を離れ、縁飾りの配置、色のリズム、小物同士の関係を調べられる。コミュニティのアーカイブが見せるのは、状況によって変わる姿だ。服はブランドのイメージを離れ、手持ちのワードローブと出会い、個人の歴史をまとっていく。
二つを合わせて読むと、問いが変わる。どちらのアーカイブがより本物なのかではなく、それぞれが何を記憶できるのか、と問えるようになる。美術館は、並外れた注意を払って物を記憶する。着る人は、その物が何をしたのかを覚えている。
参考資料・画像クレジット
- Victoria and Albert Museum、「ロリータ・ファッション:日本のストリートスタイル」、2024年4月17日更新。
- Victoria and Albert Museum、スライドショーのIIIFマニフェスト。作品解説、デザイナー、制作年、収蔵番号を参照。
- Victoria and Albert Museum、年次報告書 2012/13。Kitty and the Bulldogの展示とTea Party Clubの来館について。
- Novuyo Moyo、Laura Blair、Ayesha Singh、「Kitty and the Bulldog:ロリータ・ファッションと英国の影響」、CreateVoice、V&A、2012年。
- Mariko Yahata、「ロリータ・ファッションのルーツ:1980年代以降のストリートファッションを中心に」、2013年。
- Lo Library、コミュニティ・アーカイブ「初期のロリータ愛好者」。コミュニティがまとめた資料として参照しており、年代が独立に確認された年表としては扱っていない。