カルチャー
ロリータ好きにすすめたい、映画とドラマの4作品
BABYを愛するモモコから、初めてロリータの店を訪れるユマまで。ある晩に観たい、映画3本とスペシャルドラマ1本。
見覚えのあるワンピースが登場する。それだけで、映画を観たくなることがあります。でも観終わってから服よりも長く心に残るのは、登場人物の行動だったりします。好きな服を着ることを譲らない。入る勇気がなかった店の扉を開く。思いがけない相手と友達になる。
ここでは、ロリータをそれぞれ違う角度から見つめる4作品を紹介します。映画3本とスペシャルドラマ1本に描かれるのは、友情やものづくり、つらい別れ、そして少しばたばたした日常です。服をじっくり見るのも楽しいけれど、それを着ている人たちにも目を向けてみてください。
下妻物語
2004年公開の下妻物語の主人公は、田舎に暮らし、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTを愛するモモコ。周囲となじめないと感じることの多い場所で、服は彼女が自分らしく暮らすための支えになっています。ボンネットもリボンも、彼女にとっては自分自身の一部。周囲にあまり理解されなくても、それは変わりません。
そのちぐはぐさが、映画のおもしろさにもつながっています。丁寧に整えたモモコの装いと、もっと荒っぽく、ロマンチックとは言い難い日常。まったく別のサブカルチャーに属するイチゴは、モモコが自分で選んだ孤独の中に入ってきます。二人の友情が温かいのは、どちらも自分の好みを捨てずにいられるからでしょう。
BABYのファンなら、服を見るためだけにもう一度観るのもよさそうです。スカートのバランス、顔まわりのレース、そして迷いなくその服を着るモモコの姿。自分の服について人に説明しなければならないと感じたことがあるなら、彼女の確かさに惹かれるかもしれません。
家の中で過ごす静かな時間にも、街へ出かけるときにも、モモコの服は日常の一部です。
She Fell in Love with a Craftsman
この1作は映画ではなく、テレビのスペシャルドラマです。テレビ東京で2016年1月6日に放送された彼女が恋した職人さん~マリーは匠に首ったけ~を取り上げています。ここに記した英語の見出しは内容を説明するための訳で、正式な英語版タイトルではありません。
日本の職人に目を向けたこの物語は、服を中心に扱うほかの作品と並べて観るのにも向いています。ものづくりの技を描く話は、ロリータ好きにとって身近な疑問につながるかもしれません。レースはどうやって作られたのか。なぜリボンはあの形を保てるのか。同じ生地でも、二着の服で落ち方が違うのはなぜなのか。
テレビ東京のスペシャルドラマより。ロリータ服姿のTaylor。
ロリータのワードローブとのつながりは、仕事の見方にあります。完成したコーディネートには、素材や裁断、縫製についての選択が詰まっていますが、写真では見過ごしがちです。そうした工夫に気づいたり、作った人に思いを巡らせたりするのが好きな人にすすめたい作品です。
ハピネス
ハピネス(2024年)で、高校生のユマは余命が一週間だと知らされます。その時間の中でやってみたいことの一つが、ロリータ服を着ること。以前から憧れていたものの、まだ自分では着たことのない服でした。
ロリータの店を訪れたことで、その願いが具体的な行動になります。服を見て、選んで、いつもと違う自分を試してみる。店員役には、このファッションを追っている人にはおなじみの青木美沙子が登場します。
ずっと着てみたかった服に出会うユマ。
つらい設定の物語ですが、服を選ぶ場面には、ごく普通の喜びがあります。ユマは、自分がそうしたいからという理由で選べるのです。人目や周囲の反応が気になって、着たい服を先延ばしにしたことがあるなら、その小さな決断が身近に感じられるかもしれません。
ハピネス、2024年。
武蔵野線の姉妹
武蔵野線の姉妹は、もう少し軽やかな気分で観られる作品です。姉妹の日々の騒動やメイドカフェの世界に、凝った服が登場します。そこにあるのは、ときに気まずく、ときに忙しく、おかしな場面です。
ロリータの装いと、少し落ち着かない姉妹の日常。
BABY, THE STARS SHINE BRIGHTの服を見つける楽しみもあります。人物が多くを語る前から、着こなしがその人らしさを伝えています。服の好みを映し出しても、場面全体がファッションの話になるわけではありません。
『武蔵野線の姉妹』の装いとカフェの場面。
この作品を選びたい理由は、そこにもあります。ロリータの日々は、きれいに整えた一枚の写真だけではありません。家族も、仕事も、うまくいかない日もある。広がったスカートをはけば、それらが消えるわけではありません。映画には、その雑然とした部分も描かれています。
個性的なファッションと日常に向けられた、作品のユーモラスな視線。
エンドロールのあとに残るもの
モモコとイチゴに会いたいなら下妻物語から。気軽な気分で観たい日は武蔵野線の姉妹を。スペシャルドラマはものづくりへ、ハピネスは長く先延ばしにしていた願いへと目を向けさせてくれます。どれも、美しい服を並べただけの作品ではありません。服を好きでいることが、一人の人生の中でどんな場所を占めるのか。その違いが見えてきます。